寸暇の二人


「――それは、悪魔の囁き。兄の言葉に、少女は顔を火照らせた。
『ダメです、お兄様。わたしたちは兄だ――いっ!?』
 細くしなやかな指先が、ナナリーの未発達な乳房に触れ、掴む。
 兄の指はあくまで優しい。
 愛撫するような触り方。まるで砂糖菓子を扱う慎重さで、ナナリーの敏感な部
分に触れる。
『――ダメです……だめ……』
 ふるふると首を振る、その顔を止めたのは、兄――いや、少女の身体を弄くる
男のつぶやき。
『ナナリーは、俺が、嫌い、か?』
 ナナリーは首を振った。
『そんなわけない……』
『なら、いいだろ? ――待っていたんだ、この日を。お前が13歳に、大人に
なる日を。……待っていたんだ』
 強い力が、抱きしめる。
 ルルーシュの妹――ルルーシュの愛する少女は、小さな喘ぎを漏らした。その
閉ざされた瞼からは、一筋の涙がこぼれた。
 震える唇でナナリーは言った。おびえる腕を、兄の――想いを寄せる人の――
これから愛し合おう男の背中へまわして。
『わたしもです、お兄様』
 …………なんだ、これは」
 C.C.から手渡されたノートを閉じ、ルルーシュは呻くように言った。その眉間
には深い皺が刻まれている。
 シャワーを浴びたばかりのC.C.は、ルルーシュのベッドにうつ伏せで寝転がり、
ピザポテトをぱりぱりと摘みながら、どこで買ってきたのかファッション誌を読
んでいる。
 ルルーシュの声が、聞こえているのか、いないのか。ぱたぱたと足を上下させ
ている。寝間着代わりにしているシャツの裾は、太股を半ばまで露わになってお
り、魅力的な脚を惜しげもなく見せている。
 一枚しか着ていないらしく、下着もつけていないのか。まだしっとり濡れた肌
に、シャツが地肌に張り付き、よく見れば肌の色が透けていたし。なにより、ふ
っくらとした臀部のラインが浮き出、二つの山と、合間の谷が視界に入るたび、
ルルーシュは眉間の皺を深めた。
「……なんだ、と聞いている」
 ルルーシュは重ねて言った。ようやくC.C.は気づき、ピザポテトをバリバリか
み砕き、一気に嚥下。
 すまし顔で、
「独り言はみっともないぞ」と言った。
 ルルーシュは、それでも鋼鉄の精神力を発揮し「フッ」と笑った。
「独り言じゃない。お前が暇な時間、なにをしてもかまわない。――だが、これ
はなんだ、なんのつもりだ」
 ルルーシュの手には、一冊のノートがあった。

「ああ、読んだのか」
「『ああ、読んだのか』じゃない。なんのつもりで、こんな物を書いた」
 C.C.は、一瞬本気でわからないといった顔をしたが。
 すぐに気づくと、一つ頷き。
「本を読むのに飽きたから書いてみた、初めてにしてはうまくいったと想うのだ
が、どうだろうか」
「……訊いていいか」
なんだ」
「書くのはいい……しかし、なんだって、官能小説で。登場人物に、俺たちの名
前を付ける」
「ああ。しかし、この小説は架空の物です、実際の人物とは関係ありません。
ということだ。お前が自分だと考えなければいい話だ」
「……そうじゃなくて」
「なんだ、実際にナナリーとしてるのか。それならすまない、謝ろう」
「バカなことを言うな。ナナリーはまだ子供だ、するわけな――っ」
 言葉にしてから、マズいと気づいた。ルルーシュは自分のツメの甘さに嫌気を
おぼえながら、C.C.の反撃を甘んじて受けた。
「『まだ』? 『まだ』ということは、ルルーシュはナナリーが大人になったら、
手を出すというわけか」
 C.C.はベッドから降りると、部屋の扉のほうへ足を向け。
「よし、ナナリーに教えてやろう。喜ぶぞ」
 ルルーシュは舌打ち、追走。
 C.C.がドアノブに触れるより先に、ドアノブを掴み、鍵をかけ、触らせないよ
うにした。
「そんなことをしてみろ、……後悔させる」
 扉とルルーシュの間に立つC.C.は、長い髪を閃かせ、くるりと振り返った。
 見下ろせば、10cmもない間近にC.C.の顔があり。ナナリーと同じ、シャンプ
ーの香りがした。
「ダメなのか」
 分かっているくせに、C.C.は訊く。
 ルルーシュは一瞬よぎった魔断を打ち払うように、一層険しい顔をし。
「……何が目的だ。俺を脅迫して――ピザか? それともスシでも出前しろと言
う気か?」
「強いて言えば……」
 そこで言葉を切ると、苛立ったルルーシュは。
「言えば、なんだ?」
 C.C.は俯き、密かに口端を弛めるや。それはすぐに消し、ルルーシュを見上げ
みた。うるんだ、熱っぽい視線で。
 細い腕をルルーシュの背にまわす。
「わたしだって女だ、イキのいい男と一緒にいれば、……したくもなる」
 C.C.は顔を赤らめ、それを隠すようにルルーシュの胸に額をあてた。
「……私じゃ、ダメか? 好きなんだ、ルルーシュ、お前のことが」
 ルルーシュはごくりと唾を飲み込み。
「……冗談にしてもつまらないぞ」

「そんなっ、るるくん、私――いや……、まあそうだな」
 C.C.は肩をすかすと、むぅと唸った。
「まあ、それはそれとして、やらないか?」
「…………冗談か」
「いや、冗談抜きだ」
 ルルーシュは服越しに感じるC.C.の感触と、甘い香りに惑わされそうな自分を
自戒しながら、つとめて冷静に言った。
「お前とする理由が思いつかない。まさか、本気で俺のことが好きになった――
なんて言うなよ」
「いわないさ」
 C.C.はハハハと笑い。「ただな、最近ピザを食べ過ぎて、あまり運動もしてな
いせいでな」
「なら、走ってこい。もしくは食べるのをやめろ」
「それで本を読んだら書いてあったんだ、セックスはダイエットに良いと」
「……そんな理由か」
「ダメか」
 ルルーシュはわずかに思案した。
 ここで断って、コイツとの共犯関係が崩れるのはまずい。
 ギアスの力、ZEROの正体――コイツには知られてはならないことばかり、知ら
れている。それが一回するだけで、口止めになるというなら……
 といった、自身を納得させるための思案であったが。
「今回だけだからな」
「分かっているさ」
 C.C.は胸から額を離すと、ルルーシュに微笑みかけ。長い腕を、ルルーシュの
頭にまわし、少し引き寄せ。ようやく覚悟を決めた唇に、唇を重ねた。
 男にしては柔らかい――C.C.はそんなことを考えながら、唇はルルーシュのし
たいようにさせ。自らは、片手は黒髪をなでながら、反対の手を動かして、ルル
ーシュのベルトに触れた。片手で器用に外した。
 ルルーシュは一旦唇を離し、皮肉げに笑った。
「巧いな、どこで教わった? そんな技術」
 ルルーシュの骨っぽい手が、C.C.の乳房を服の上から掴み、揺さぶるようにし
て揉む。
「無粋な男だな。女にはそういうことは訊くものじゃない」
「ああ、そうかい」
 再び唇を重ねる、先ほどよりも激しく。
 ボタンを外すのももどかしげに、服の裾から手を入れ、シャワーから浴びた熱
がまだ残り白い乳房は、ほんのりと桜色になっている。その柔らかさを確かめる
よう、何度も何度も揉む。
 C.C.はルルーシュの下を脱がせてやると、それが堅くなっているのを確認し、
手を離し。自分のうっすらとした茂みに囲われた、姫部に触れ、受け入れる準備
を始める。
 ルルーシュは強引に指を差し入れることなく、執拗に胸を揉み、尻を揉む

 

 筋肉がついてる分、胸よりも揉みごたえのある尻肉に、揉む力を強め。かとお
もえば、ルルーシュの指先は、C.C.の菊紋に触れ、くすぐった。
 C.C.が身震いするのを確かめると、ルルーシュは指を押し入れ、くにくにと動
かして、わずかに刺激する。それを嫌いがるように、C.C.は唇を離すと。
「前の準備はできているが、後ろの方がよかったか」
 などと冗談めいた。
 ルルーシュは「まさか」とは言いながら、尻穴に挿れたら、C.C.がどんな顔を
するか確かめたくなったが。C.C.の冗談を肯定するのを嫌い、口端をゆがめ。
「ドアに手をつけ」
「イク時の顔が見られたくないのか」
「フッ……お前は、泣く姿を見てほしいのか?」
 C.C.は柳眉を曲げ、息を吐いた。
「泣かせてみろ」
 二人は、一旦互いの拘束を解いた。
 C.C.はドアに手をつき、足を肩幅より広く開くと、腰を突き出し。自らの姫唇
を指で拡げた。
「大胆だな――いや、淫乱、かな」
 ルルーシュは苦笑して、C.C.の腰を掴んだ。
「いれる場所がわからないと、泣かれても困るのでな」
「まさか。……いれるぞ」
 言うやルルーシュは亀頭を、鮮やかな色の姫唇にあてがい、一気に押し込んだ。
「……くっ」
 C.C.の中は窮屈だったが、十二分に濡れ。膣は収縮し、ルルーシュを受け入れ
る。
 細かなブラシで撫でられるような感触を、膨張しきった陰茎で感じ、根本まで
射し込むと。C.C.は言った。
「どうだ?」
「……なにがだ」
「もう少し締めた方がいいか」
 ルルーシュはそんなことができるのかと、疑問に想ったが、口にはせず。
「いや、このままでいい」
 と強がり、ゆっくりと腰を動かし始めた。
 出し入れするだけで、背中がゾクリとする。
 C.C.はルルーシュの全てを受け入れ、それでいて、腰を自ら動かす余裕もあっ
たため。ルルーシュの慎重な動きの意味に気がついた。
「一度、だしてもいいぞ。その方が動かし易いだろうしな」
 ルルーシュは無言で頷き、あっさり臨海に達した陰茎を一旦抜くと、自らの手
で擦り、絨毯へ射精した。
 一度射精したくらいでは、萎えなかった陰茎を再び射し込む。先ほどよりも、
C.C.の膣は入れやすかった。
 ――舐められてる。
 ルルーシュは苛立ち紛れに、C.C.の尻に叩きつけるように、腰を振った。

 一度射精したルルーシュ自身は、敏感だが少し鈍くなっており、ちょっとやそ
っと動かしても直ぐにいくようなことはなかった。
「元気になったようだな」
 C.C.が満足げに言った。
 ルルーシュは腰を掴んでいた両手の内、片手でC.C.の胸を掴み、揉んだ。C.C.
はわずかに身をよじらせ、くすぐったそうにした。
「好きなんだな、胸」
「……さあな」
「ナナリーも揉んでやれば、大きくなると思うぞ」
 ルルーシュはできるだけの力を込めて、腰を振っている――はずだというのに。
「…………一つ、訊いていいか?」
「なんだ、ナカでだしたいならだしても――」
「なんで、そんなに余裕なんだ」
 気持ちよくないのか――その言葉は言わなかった。
 C.C.はルルーシュの言葉に、何故か答えず。ハハハと笑った。
 その反応にルルーシュが、男としての自尊心を傷つけられるような想いを抱く
だけの時間が開き。二人は無言のまま行為を続けていたが、ある瞬間。C.C.が身
をよじり、艶やかな口唇から微かな声が漏れた。
「…………っ――あ……んぅ」
 甘えるような吐息で放たれた言葉を聞き取れず、どうしたと訊くと。C.C.はド
アに額を押しつけ、体から力を抜いた。
「……あまり、…………だと、お前が調子――乗るから……」
 腰の打ち付けに合わせて、途切れ途切れになる言葉。ルルーシュは気づいた。

「我慢、してたのか?」
 C.C.は否定も肯定もしなかった。ただその細い膝は、体を支えるのも辛そうに
震えていた。――それだけで十分だった。
 ルルーシュは一旦陰茎を抜いた。
「ダメだっ」
 C.C.が思わず声をあげ、ハッとし、その横顔が赤らむ。
 ルルーシュは怜悧なナイフの声で囁いた。
「心配するな」
 言うやC.C.の体を強引に振り向かせ、ドアに叩きつけて、抵抗を封じ。C.C.の
白く伸びやかな右脚を掴むと、持ち上げて、脚を開かせた。
 左脚の太股をつたい、粘性の汁がこぼれ落ちていく。ルルーシュはそれを人さ
し指で拭うように手を動かし、C.C.の姫唇に手をあてがうや、強引に指を押し込
み。じゅぷじゅぷと音がなるように動かす。
 C.C.は俯き逸らして、見ようともしない。
 ルルーシュは悪魔の笑みを浮かべ、C.C.の淫水に濡れた指先で、C.C.の顎を持
ち上げると。その指先を、今度はC.C.の柔らかな口唇に差し入れ、舐めさせた。
 ルルーシュはクククと喉を鳴らし。
「まるで、乙女だな」
 C.C.はムッとした目つきでルルーシュを見て、怒ったように。
「お前が大きいのがいけないんだ」
 と、文句なのか、褒めてるのか分からないことを言った。
 ルルーシュは猫がネズミをいたぶるような目つきで、C.C.を見。汚れた指先で
C.C.の前髪をあげると、額にキスをし。
「お前のいく顔がみたい――いや、見せろ」
 囁く。
 C.C.が再びうつむくのにかまわず、ルルーシュは汚れた手で尻肉を掴み、脚を
掴んでいる手を太股へ移動し、C.C.の軽い体を持ち上げ。突き上げるように、C.
C.の淫唇を割った。
 一度、優位にたてば強くなるルルーシュは。先ほどよりも強く、激しく、C.C.
の細い体が壊れてしまいそうなほど突き、揺さぶり。C.C.のプライドを溶かせて
いく。
 C.C.はそれでも、堪えようとした。ルルーシュにイく顔を見られたくなかった。
 しかし、自重で深く突き立ち。脚の長さが違うせいで、地に足が着かず、踏ん
張りも効かない。
 C.C.はルルーシュの肩に顎を乗せ、その首に額を預けた。
 ルルーシュは二度目の射精を膣内でしたが、今度はどちらもなにも言わず。ル
ルーシュは酷使に痛みを感じ始めた陰茎を、それでも強く突き上げる。
 C.C.の体が時折震える、しかし、C.C.は声を漏らさない。

 頭の中が白くかすむ、もはや、快感で頭がイッてしまいかねない状況。――
だから、あれは幻夢かもしれない。
 ルルーシュは三度目の高ぶりを感じ、腰つかいを鋭くした。
 C.C.の荒い息づかいを間近に聞く。
 ルルーシュが絶頂に達しようという瞬間――
「……だ――だめだ――あアっ」
 C.C.の喘ぎが、聞こえた。

   ***

「――ところで、最初の小説はなんだったんだ?」とルルーシュは聞いた。
「ああ、あれを読んだお前が、どうしようもない性衝動に身を任せ、目の前にい
る美女を襲うという予定だったんだ」
「……バカか」
「むぅ、しかし結果オーライだ。さて」C.C.は言った。
「もう1ラウンドと行こうか」
「……嘘だろ」
「お前と私は相性が良いみたいだ、さ、やるぞ」
 ルルーシュはまどろむ思考で答えた。
 コイツにはギアスをもらった借りがある。
 俺がZEROだと口止めする必要もある。
 なにより、俺たちは共犯者だ。
 故に――
「五分まて」
 そういって、くすぐったそうにするC.C.のうなじにキスをした。


――END

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